腕時計を長く愛用していく際には定期的に行っていきたいオーバーホール。
お店に依頼すると高額になってしまうことから「自分でやってみたい」と考える方もいるのではないでしょうか?
ですがちょっと待った!オーバーホールを自分でやるにはリスクがある事をご存知ですか?
今回は「オーバーホールは自分でできるの?」という疑問に回答し、リスクについて深掘りしていきます。
また、オーバーホールを行う際に必要な工具についても取り上げていきます。
腕時計のオーバーホールについて詳しく知りたい方は是非チェックしてみてください。
そもそもオーバーホールは必要なの?
分解して点検・部品交換・オイル注油などを行うオーバーホール。
お店やメーカーに出すと高額になるため、気が進まないと思う方も少なくありません。
ですが、お気に入りの腕時計を長持ちさせたい人にとって定期的なオーバーホールは必須。
機械式腕時計やクォーツ時計は精巧なムーブメントが複雑に絡み合う構造のため、メンテナンスなしでは、経年劣化による故障リスクが高まります。
そのため、定期的にオーバーホールする事は時計の寿命を長持ちさせるためにとても重要なのです。
オーバーホールは自分でできる?リスクを解説
メーカーや修理店に依頼するオーバーホールは費用が高くなるから「自分でやりたい」と考えている方へ。
結論から言うと、オーバーホールは自分で行うことは可能ですがおすすめはできません。
理由は主に2つのリスクがあるから。
- 専門的な知識・技術を覚える時間が必要
- 失敗した時のリスクがあって危険
専門的な知識・技術を覚える時間が必要
メーカーや修理店でオーバーホールを実施するプロは「時計修理技能士」という資格を持っています。
つまりオーバーホールには専門的な知識や技術が必要なのです。
技能を磨くためにも時間がかかりますし、オーバーホール自体も時間のかかる作業。
初心者が一から覚えて実施するには手間と時間がかかりすぎるため、あまり効率的とは言えません。
失敗した時のリスクがあって危険
オーバーホールには専門的な技術が必要であるため、初心者が行うと失敗のリスクがあります。
機械式時計では100を超える部品で構成されており、それらを分解して組み立て直すのは素人にとって至難の技。
万が一部品の付け間違えや付け忘れが起きた際、時計が動かなくなるなどの危険があります。
そうなると修復するために結局修理店へ足を運ぶことになって二度手間ですし、修理不可能な状態となってしまう事も考えられます。
上記の理由から、既に時計分解の知識がある方、仕事で時計を触る事が多いという方以外は、基本的にメーカーや修理専門店に依頼して行なってもらうことのがおすすめです。
オーバーホールを自分で行うメリット
ただ、自分でオーバーホールを実施する事はリスクばかりでなくメリットもあります。
- オーバーホール費用を大幅に削減できる
- 時計分解の専門的な知識が身につく
オーバーホール費用を大幅に削減できる
メーカーや修理専門店にオーバーホールを含めたメンテナンスをお願いした場合、ブランドや種類によりますが、平均で3万円以上の費用がかかることが多いです。
対して自分でオーバーホールを行う場合、必要な工具やオイルなどの費用だけで済むため1万円前後の予算があれば行えます。
工具は2回目以降の分解にも使えますから、さらなる費用がかかる心配もなく、金銭的なメリットは大きいです。
ブランドによっては一度に数万円もの料金が発生するのがメーカーや修理専門店となっており、金額面でいえば圧倒的に自分で行う方が良いでしょう。
※オーバーホールにかかる費用について解説したこちらの記事も併せてご覧ください。
自動巻き腕時計のメンテナンス|オーバーホールのタイミングと費用
時計分解の専門的な知識が身につく
時計本体をを分解したり注油や組み立てする技術は、それだけで仕事にできるくらいの優れたテクニックです。
時計修理技能士の資格取得を目指したい方であれば、勉強・練習のために自分の時計をオーバーホールしてみるのは良いでしょう。
ただ、おすすめできるのは技能士を目指す方や既に技能を持っている方だけである点には注意してください。
前述した通り、技能の習得には手間と時間が掛かり過ぎます。
自分の時計のためだけであれば、多少の出費は覚悟して潔く修理店にオーバーホールを依頼するほうがはるかにコストパフォーマンスに優れているでしょう。
オーバーホールに必要な工具
それでも自分でオーバーホールをやりたいという方は、まずは工具の準備から行っていきましょう。
オーバーホールに必要なものをざっと挙げると以下の通り。
- 精密ドライバー
- ピンセット・絶縁ピンセット
- 剣抜き・剣おさえセット
- ムーブメント・パーツホルダー
- こじ開け
- バネ棒はずし
- ルーペ(キズミ)
- 時計油・オイラー
- ベンジン
精密ドライバー
時計の裏蓋などを開けるのに重宝するドライバー。
微小なサイズの穴のネジを開けたい時に役立ちます。普通サイズのドライバーではサイズが合わず穴を潰す危険があるため、精密ドライバーを用いるのが良いです。
絶縁ピンセット
時計は磁気に弱いため、磁力のもつモノには触れない・近づけないのが鉄則。
そんな腕時計分解の作業時に必要なピンセットの中でも、電流を通さないように絶縁処理された「絶縁ピンセット」がおすすめです。
剣抜き・剣おさえセット
時計の長短秒針(剣)を抜き差しするために用いる工具。
針を抜き差しした際に垂直に取り付けないと、針同士がぶつかって精度の乱れに繋がります。
この工具を使うことで針を垂直方向に正確な取り付けることができます。
ムーブメントホルダー
いくつもの部品で成り立つ時計内部のムーブメント。
精密でデリケートなムーブメントを手で触れないように固定させるための台です。
また、分解した部品を一時的に保管しておくパーツホルダーがあると便利です。
こじ開け
ネジ式ではない裏蓋の場合に使う「こじ開け」。
文字通り平たい部分を裏蓋の隙間に入れてこじ開けるのに役立ちます。
バネ棒はずし
本体からベルト部分を取り外すために用いる道具。
分解作業時にはベルトを取り外すことが多いので使用頻度も高い工具の一つです。
ルーペ
細かい部品を扱う作業に対して肉眼では見えにくい個所が出てくるもの。
ルーペを使用することで歯車の組み合わせに狂いはないかなどを確認しやすくなります。
時計油・オイラー
歯車とその軸受けといった、ムーブメントの重要部分に注油する潤滑油。
部品の摩耗を防ぐことが時計の寿命を延ばすことに繋がるため定期的に注油するのが推奨されています。
注油には専用のオイラー(油さし工具)を使用することで、油の差し過ぎを防ぐことができます。
ベンジン
機械器具の油汚れを落とす薬品。時計内部に差された潤滑油が劣化することがあり、その汚れた個所に使用することでキレイにします。
これらの工具やオイル類はAmazonなどのネットショップで簡単に用意することができます。
全て用意しても、お店にオーバーホールを頼むより安上がりなため、そこまで費用面で負担になることはありません。
オーバーホールの工具まとめ
以上、今回はオーバーホールは自分で行えるのか?についてのメリット・デメリットの解説と、必要な工具についてご紹介しました。
内容のまとめは以下の通り。
- オーバーホールは基本的に専門家に依頼するのがおすすめ
- 専門的な知識が必要かつ手間も時間もかかるため判断は慎重に。
- ただし、費用削減などオーバーホールを自分でやるメリットもある
- 自分で行う場合は必要な工具を揃える
繰り返しになりますが、オーバーホールには分解・組み立てや、適切な部品への適切な量の注油など、多くの専門知識・技術が必要となってきます。
失敗した時に修復不可になってしまってからでは遅いため、よほどの自信がない限りはメーカーや修理店に依頼するようにするのが良いでしょう。